洞窟の中は、例えるなら灼熱地獄だった。
マグマは川となって流れ、時々噴き出してくる。
普通の人間なら、多分一分と持たないだろう。
だが、ウォーティスが力を貸してくれたのだ。
洞窟の入り口で、今はペンダントとしてラティスの首に掛かっている水の珠が突如として光り、水の守護精ウォーティスがその姿を現した。
ヒトの身では危険な道行きだろう。我の加護を今だけ主ら全員に……
すると、先程まで感じていた暑さが、急に和らいだ。
だが、我にとってもこの場所は辛い。長くは持つまいという事だけ、憶えておいて貰おう……
そう言い残してウォーティスは姿を消した。
「ありがとう、ウォーティス」
ペンダントに語りかけるように、ラティスがそう言う。
そうして洞窟内に入ると、奥へ奥へと進んで行く。
マグマの川のすぐ横を通り、身を焦がすような熱風の吹く場所を抜け、ようやく行き着いたのは、水の珠の時同様、祭壇らしき物がある空間だった。
近付くとやはり、今度は赤い珠が淡い光を放っていて。
そして水の珠同様、突如として強い光を放った。
現れた守護精は、爬虫類を連想させるような姿だった。
トカゲとワニの中間のような顔に、背びれはカメレオンのそれに似てはいるが、逆巻く炎の形をしていて、体は爬虫類特有の鱗に覆われている。
鋭い爪と牙、背中にはコウモリのような羽根を併せ持ち、二本足で立っている。尻尾が胴体程長く太い為、それでバランスを取っているのかもしれない。
体全体の色は赤だが、爬虫類に多くみられるように腹部だけは白い。
我が名はファイアスティ。火の珠を守護する者
鼻息荒く、だがその声はやはり頭に直接響くものだった。
汝ら、火の珠を求めし者達よ。真に相応しき者か、試させて貰おう。さぁ、その力を我に示せ!
そう言うとファイアスティは、突然神無達に襲い掛かってきた。
「要するに勝てばいいんだろう?望む所さ!」
真っ先に反応したのはマリノスだ。
腰にぶら下げていた銃を抜き、ファイアスティ目掛けて弾を放つ。
ぬぉ!?これは……!
命中した弾は、ファイアスティの腕を一時凍らせた。
「炎には氷!特製の
「まだまだぁ!」
すかさずラティスが、凍った場所にピンポイントで鞭を振るう。
ぐおっ!……調子に乗るな!
そう言ってファイアスティが口から凄い勢いで炎を吐き出す。
だがフォリシスが間一髪、一歩前に出て両手を突き出す。
「
すると炎は見えない壁に阻まれ、届かない。
それでもその熱を肌で感じ、じわじわと体力が奪われる。
うぬぅ……
得意の炎を防がれた事を悔しそうにするファイアスティに、今度はリムの魔法が放たれた。
「
氷の竜巻がファイアスティに襲い掛かり、たちまちその体を凍らせてゆく。
しまった!身動きが……っ!
「これで……お終い!」
最後に神無が助走を付けて跳ぶと、上段から縦に一閃する。
ぐぬおおおおぉ!
そう叫び声を上げ、ファイアスティは光が弾けるように消えた。