マニュファダスは鉱業で発展した街だ。
その街並みは、今までの街とは明らかに違っていた。
街の一角には高い煙突が立ち並び、黒い煙を出している。
マリノスの説明だと、鉱山から採掘した鉱物を加工する工場らしい。
そして建物。
木でも土でも、レンガでもない壁。
手触りはレンガに似ていて、でも、土壁のように継ぎ目はない。
「マニュファダスの家は、骨組みに鉄の棒を使っていて、壁は石灰石と粘土と砂と砂利と水を練り合わせた物で出来てる。コレが丈夫なんだ」
自分の事でもないのに、マリノスは得意気だ。
「……で?肝心の雷の珠がある鉱床はドコなんだよ」
最近何だかマリノスばかりが活躍しているのが面白くないのだろう、ラティスが苛々しながら聞く。
「……鉱山の事は親方に聞くのが一番だ」
そうしてマリノスの案内で、鉱山を取り仕切る親方の元へと向かう。
「ベリノ親方!」
事務所のような建物に入って、マリノスが一人の男に声を掛けると、その人物は目を見開いて驚き、すぐにマリノスを迎え入れた。
「……マリノス?オメェさん、もしかしてマリノスか!?いやー懐かしいねぇ。元気にしてたか?」
ベリノは気のよさそうな、がっしりとした体格の男だった。
「ところで一体何しに来たんでぇ?」
「実は入りたい鉱床があるんだ。ダメかい?」
「まぁ鉱床にもよるが……いってぇどの鉱床なんでぃ?」
鉱床の種類を聞かれてマリノスはフォリシスに視線を向け、それを受けてフォリシスが代わりに答える。
「帯電性の鉱物が採掘されている鉱床なんですが」
すると突然ベリノの表情が変わった。
「止めときな。あそこは危険だ」
「どうして、ですか?」
「近頃鉱石が放電するようになって、誰もあの鉱床には入れねぇんだ……」
「それでも、私たちは行かなくては」
リムの言葉に、全員が真剣な顔で頷く。
「……分かったよ。だが、俺は止めたからな?どうなっても知らねぇぞ」
ベリノは脅すようにそう言って、鉱床の入り口へと案内してくれた。
鉱床の中は成程、確かに放電していた。
時々、小さな雷が坑道を走る。
ベリノの話だと、放電をするようになったのはある出来事の後らしい。
その出来事とは。
ある時採掘の途中で、一人の坑夫が空洞を見つけた。
その空洞は、どうやら別の場所へと繋がっているようで。
空洞の奥には祭壇らしき物があったらしい。
それが何なのか確かめようと、空洞の中に足を踏み入れた時。
空洞周辺の鉱石が放電し始め、それは徐々に広がり、今では坑道全体が放電するようになったらしい。
元々帯電性だった鉱石が放電し始めた事で、採掘は危険だと判断され、今では誰も足を踏み入れる事がないという。