だが、実際には通る事は可能だった。
まるで雷が意思を持っているかのように、神無達を避ける。
「ヴォルティック……」
リムがふとそう呟く。
「もしかして、雷の守護精ヴォルティックが我々の事を認識しているのではないでしょうか?」
「それって、自分の元に来る人間を選んでるって事?」
「もしくは、魔人を近付けさせない為。私達は既に水と火の珠を手に入れているので、それで認められたのではないでしょうか?」
そんな事を話しながら坑道を奥へ奥へと進み、五人は遂に目的の空洞へと辿り付いた。
そこには話に聞いていた通り祭壇があって。
それはもう見間違うハズもない祭壇に、淡い光を放つのは紫の珠。
「雷の宝珠……」
誰ともなくそう呟くと、突如眩い光を発して、雷の守護精ヴォルティックが現れる。
しかし。
ヴォルティックはまともな形を成してはいなかった。
正確に表現するのであれば、核のような球体を中心に、その周りで常に放電している雷が、時々思い出したように様々な形を成していく。
それは人のような形だったり、何かの動物のような形だったりした。
我、雷を守護する者
その時雷が地を走り、リムの足元で散った。
雷を操りし者よ。汝、己の真の姿は何ぞや?
「……え?」
真の姿とはどういう意味だろう。リムは困惑する。
「私は、人ではない、という事ですか……?」
……汝は人だ。だが、その姿は偽り。まだ取り戻せぬか……
「……記憶の事言ってるんじゃない?」
「そうなんですか?ヴォルティック」
だが、ヴォルティックはそれには答えなかった。
我、汝に加護を与える。冴え渡る雷の加護を
その言葉と共に、雷の珠がリムの胸元でペンダントになる。
早く己を取り戻せ
それだけを言い残して、ヴォルティックは姿を消した。
「……」
リムの表情は暗い。
そんなリムを見かねて、神無は彼女の肩をポンと叩きながら言う。
「大丈夫だよ。きっかけさえあれば、記憶なんてすぐ戻るって」
「そうですよ。お師しょー様の解呪は、不完全とはいえ絶対ですから!」
「でも……私は……」
フォリシスも明るく励ますが、リムの表情は暗いままだ。
「……例え」
リムの言葉を遮って、呟くように口を開いたのはラティスだ。
「例えお前が何者でも、俺達は気にしない」
「そうさ。だから気に病む事はないよ」
「皆さん……ありがとうございます」
マリノスにも言われ、ようやくリムは少しだけ元気を取り戻した。
「鉱物の放電、収まってますね」
「雷の珠はもう手に入れたんだし。やっぱりあれって、余計な侵入者を防ぐ為だったんじゃない?」
「かもな」
「これで親方達も、鉱石の発掘が再開できる。知らせてやれば喜ぶな」
「ええ。ぜひお知らせしなければ」
見ると坑道の放電はもう収まっていて。
五人は話しながら鉱山を後にした。