闇の中で、何かが蠢く。
 それは、侵蝕する邪悪なる存在。

 “虚無”

 虚無は、手に入れた体を動かしてみる。
 もう、ほぼ100%自分の意志で動かせるようになった。
 闇の中で虚無はほくそ笑んだ。

 長かった。
 月の宝珠に封じられて五百年。
 封印が解け、体を手に入れるのに十五年。
 その体を思い通りに動かせるようになるまで、数ヶ月だ。
 だがこれで、目的がようやく果たせる。

 その時、闇の中に二つの影が現れた。
 人の形をした魔人だ。

『機は熟した。我が大いなる目的の為、遂に動く時が来たのだ……だが、我を再び宝珠に封じようとする輩がおる』

 魔人達は静かにそれを聞く。

『行け。我の邪魔をする者共に、死を』

「御意」
「仰せのままに」
 魔人達は、再び闇へと消えた。

『……古の都、天空へと続く道……待っておれ、古の民よ。その秘められたる大いなる力を、必ずや我が物に……!フフフ……ワァーハッハッハッハァ!』


 闇の中に、笑い声がいつまでも響いていた。