外へと出られたら、一度私をお呼び下さい
 ウィンディアはそう言って姿を消した。
「……じゃあ取り敢えず、外に出る?」


 外に出ると神無はウィンディアの指示通りにする。
「えっと……ウィンディア!」
 するとペンダントになった風の珠が光り、ウィンディアが現れる。
改めてよろしくお願いします。貴女の名は?
「……神無。夢月神無よ」
では神無。心地良い風の波動を持つ者よ。私は貴女の翼となり、貴女の望む場所へと運びましょう
 そう言ってウィンディアは、優しく抱き締めるかのように神無をその羽根で包み込む。

 だがその直後、何かを感じ取ったのか、ウィンディアは上空を見る。
 すると突然空間が歪み、何者かが現れた。
「……お前!エバーラッサの……!」
 それは、水の珠を手に入れた時に現れた魔人だった。

「愚かな人間共め……特にそこのクソガキィ!あの時はよくも……!」
 そいつは、マリノスに対して恨みを持っていた。
 それもそのハズ、あの時“激辛スパイシー弾”なんてものを目に当てられ、逃げ帰ったのはさぞかし屈辱だったであろう。

「覚悟ぉ!」
 魔人が攻撃を繰り出してきたその時だった。
去りなさい、禍々しき者よ
 そう言ってウィンディアが翼を大きく一度羽ばたかせると、巻き起こった風に魔人は吹き飛ばされてしまった。

……今のはただ追い払っただけです。また再び来るでしょう
 ウィンディアは静かにそう言う。
さぁ、それはさておき、何処へでも貴女の望む場所へ行きましょう
「あの、その前に……全員乗れる……?」
 どう見てもウィンディアに乗れるのはせいぜい一人か二人。
 だがウィンディアは全く動じなかった。
問題ありません
 すると一陣の風がウィンディアを包み、次の瞬間にはもうウィンディアの大きさは元の三〜四倍の大きさになった。
さぁ、私の背に……

 そうして全員がその背に乗ると、ウィンディアはその羽根を悠然と羽ばたかせながら飛び上がった。
「うわ……ぁ!」
 眼下に広がる景色に、神無は思わず声を上げる。

 何もかもがミニチュアに見えて、まるで玩具のようだ。

神無、貴女の望む場所を
「望む場所……」

 そう、今ははしゃいでいる場合ではない。
 早く次の守護精の元へ行かなくてはならないのだ。

「次は、“悠然と構える大地”です!」
「じゃあ、ヒューレ山脈の麓、マウンレギオの街へ!」
分かりました

 ウィンディアはその羽根を羽ばたかせ、一行を背に、一路マウンレギオへと向かった。