流石に、ウィンディアの背に乗っての移動は早かった。
 歩きならニ、三日かかる所を、半日とかからず着いてしまったのだ。

「移動手段があるってのは便利だよね」
「ええ。風もとても気持ちよかったですし」
「滅多にできない体験だよな」
「……僕は落ちやしないかと、ヒヤヒヤしましたよ……」
「なんだ、フォリシスは案外小心者だな」
「と、とにかく!その話は終わりにして、情報集めましょう!」
 そうしてマウンレギオの街で、早速情報集めを開始する。


 だが、なかなか思うようにはいかなかった。
「大地の守護精アーサム……ヒューレ山脈のどこかだとは思うんですが……」
「もーお手上げだよ。手掛かりが何も無い」
「こっちもだ。伝承、民話、言い伝え……全部さっぱり」
 情報は全くと言っていい程、皆無だった。
「いっそ、山に入って勘で進むっていうのはどう?」
「流石に、それではリスクが大きすぎやしませんか?」
 だがそうでもしなければ、見つける事は出来ないように思えた。
「……今日は日も暮れてきましたし、また明日にされませんか?」
 リムのその提案に、異議を唱える者はいなかった。


 次の日。
 宿の食堂で朝食を取っている時だった。
「あのさ……考えたんだけど、守護精達が場所、知ってたりしないかな」
 神無の提案に、全員がそれぞれ意見を言う。
「可能性としては高いですが……」
「問題は教えて下さるかどうか、ですね」
「でも、そのアイディアはいいんじゃないかい?」
「ま、念の為聞いてみるに越した事はないな」

 そうして街の外に移動し、それぞれ順番に守護精を呼び出して聞いてみる。

 まずは水の守護精ウォーティス。
我らは人の手の及ばぬ場所を好む

 次は火の守護精ファイアスティ。
知らねーな。だが行けない場所にはないだろう

 そして雷の守護精ヴォルティック。
聖所とは即ち、我等の寝所

 最後に風の守護精ウィンディア。
今までの旅を思い起こせば、自ずと答えは出るハズです

「えーっと、つまり纏めると……どっかに洞窟でもあるんじゃない?」
「……だけど、一体どの辺りに?」
「登山道の周辺でない事は確かですよね」
 少なくとも、登山道の周辺にそれらしきものがあれば、最初の情報収集の段階で何かしらあるハズだ。

「……私、ちょっと山の周辺を見てくるわ」
「は?ちょっと待て、どういう意味だ?」
 くるりと踵を返して皆に背を向けた神無を、ラティスが止める。
「どういう意味って……ウィンディアに乗って、どこかにそれらしい入り口がないか見てくるの」
「あ……悪い」
 そう言って謝るラティスに苦笑しながら神無は言う。
「一人じゃ見落としもあると思うし、一緒に来る?」
「……そうする」
 するとリムが笑顔で提案した。
「じゃあ私達はもう一度、街の人に聞き込みをしますね」
「そうですね。じゃあ行きましょうか、マリノス君」
 フォリシスがリムに同意して、マリノスに有無を言わさずに連れて行った。