第十二章〜告白〜


 洞窟を出た五人は、ラノス王国に一番近いインセールドの街に宿を取る。

 インセールドは雪に覆われた静かな街だ。
 位置的には、北東の孤島とラノスの中間にあたるだろう。


 宿の部屋の中で皆が思い思いに寛いでいると、リムが声を掛けた。
「皆さんに、大切なお話があります」
 それは、自分の記憶が戻ったという内容で。
「それで、リムさんは自分が何者か分かったんですね」

「ええ。……私の名はリムール=ストラ=ラノス。現ラノス国王妃の妹です」

「!」
 その想像もしていなかった言葉に、それぞれが反応する。
「……お姫様、だったの……?」
「確かに、言葉遣いはやけに丁寧だったけど……」
「お、王族の方だったなんて……あぁ……僕、色々と迷惑掛けたり、失礼な態度取ったりしましたよね!?申し訳ございませんでした!」
「へぇ、王族の……成程。記憶が戻った事で、取り巻く雰囲気も若干変わったようだしね」
 驚いたり、納得したり、感心したりのその様子に、リムは苦笑する。
「皆さん、今まで通り接して下さって構いませんわ」
 リムがそう言うと、一番に声を上げたのは神無だ。
「うん。じゃあ質問。ラノス王国で一体何があったの?」
 神無の変わらない態度に、リムは嬉しくなる。

 そうして、思い出すように話し始めた。
「今から十五年前……」

 それは、暗雲垂れ籠める夜に起こった。
 突然城内を眩い光が照らし、月の宝珠に何かあったのかと駆け付けた時にはもう、珠は七つの光に別れ、飛び散ってしまっていた。
 そしてその場には、黒い霧のようなものが漂っており、次の瞬間、近付いた国王の体に入り込んだ。

「で、では、その黒い霧が、虚無だったのでございましょうか……?」
 ガチガチに緊張した様子でそう話すフォリシスに、リムは少し苦笑する。
「……ええ、その通りです。邪悪な気配を感じた私と姉様は、すぐに対策を講じました」

 それは魔法による封印術。
 一先ずそれで国王の意識は戻った。<
 だがそれ以来床に伏せてしまい、思うように動けない状態が続いた。
 しかも、常に術を掛けていなければ、すぐにでも虚無は国王の体を乗っ取る可能性があった。

「封印術は高度な魔法で、城にいた魔法使いの中では我々姉妹の他、数名にしか使えませんでした。その為国を離れる事は叶わず、この十五年、 別の者達に大賢者様の捜索と、七つに散ってしまった宝珠の捜索を命じましたが、誰にも見つける事はできませんでした……」
 その事にフォリシスは、沈んだ声で言う。
「……お師しょー様は多分、全部知ってて、それでも『まだその時ではない』と……でもどうして……?」
 そう疑問に思い、今はもういない大賢者に思いを馳せる。