第十三章〜決戦〜


 ウィンディアの背に乗りラノスへ入れば、その静けさに息を呑む。

 活気がない、なんてモノじゃない。
 皆、虚ろな瞳で、まるで生気を感じられない。

「これは……っ!?」
「恐らくは虚無の影響でしょう。……こちらです」


 リムの案内で裏路地に入ると、そこは行き止まりだった。
「何もねぇじゃん」
「王族にのみ伝えられる隠し通路です。……我はリムール=ストラ=ラノス。ラノスの名を持つ者なり……」
 リムがそう言って手をかざすと壁は消え、奥へと続く道が現れた。
「さぁ、行きましょう」
 リムを先頭に全員が通ると、壁は再び現れ、何事もなかったかのように、裏路地はいつもの静寂に包まれた。


 城内は閑散としており、人の気配がまるでない。
 不気味なくらいに静まり返った広い回廊を、五人は慎重に進む。
 すると、どこからともなく声が聞えてきた。

「……ネズミが五匹……しかもまた貴様等かぁ……!」

 言葉の後半には怒りが含まれ、現れたのは、エバーラッサ・セリークルで追い払ったあの魔人。
「特に小僧……貴様、よくもあの時は舐めたマネをしてくれたな!」
 その怒りは主にマリノスに向けられ、あの時と同様、エネルギーの塊を放ってきた。
 それに対してリムがすかさず魔法障壁で防御し、その隙にフォリシスが攻撃呪文を唱える。
「光の粒子よ、かの者を貫け!閃光の槍≪スピア・レイ≫!」

 フォリシスがそう唱え終わると、魔人の頭上から光の粒子がまるで槍のように降り注ぐ。
 かなり上位の魔法だ。

「やったか!?」
「まだよ!」
 言いながら神無は魔人に斬りかかって行く。

 しかし。
「きゃ……!?」
 神無は何か、衝撃波のような物に弾き返されてしまった。
 そうしてそのまま、背中を壁に強かと打ち付け、呻き声を上げる。
「うぅ……っ」
「神無!」
 急いで傍に駆け寄り抱き起こしてくれるラティスに、神無は心配を掛けまいと、大丈夫だという合図を送る。
 背中を強く打ち付けた事で、上手く呼吸が出来ず、話せないからだ。

 魔人の方はというと、全身から――恐らくは血なのだろう――かろうじて深緑色だと分かる液体を流しながら、それでも立っていた。
「貴様等、よくも……許さん、許さんぞォ!」
 魔人はエネルギーの塊を再び作り出し、それをどんどん大きくさせる。

 膨大なエネルギーが蓄積されていくのが、傍から見ていても分かる。
 時々、塊の表面でバチバチッとスパークする程だ。

「クソッ、させるか!」
 アレを放たれたら、恐らく無事では済まないだろう。
 ラティスは鞭をしならせ、魔人の動きを封じる。
「今だ、やれ!」
「小賢しい!」
 魔人は難なく鞭を振り解く。
 だが、そこにできたほんの一瞬の隙。
 マリノスは銃を構え、引き金を引いた。
「行っけぇ!」

 弾は今までとは段違いの威力を持つ新型。
 実はマニュファダスを発つ際、ベリノに密かに渡されていた代物だ。

 弾は物凄い勢いで銃口から飛び出し、反動でマリノスが尻餅をつく程だ。
 弾丸は電気を帯び、そのまま真っ直ぐにエネルギーの塊を貫いた。
 その衝撃で、蓄積されたエネルギーは急激な化学反応を起こしたのか均衡を失い、膨張し、次の瞬間には大爆発を巻き起こした。

「……っ!」

 激しい爆風が全員を襲う。