大学の前期試験を終えて、二月中旬。
私は次の試験に向けての勉強をしていた。
「……どうにも集中力に欠けるな」
それもそのハズ。今日は試験の結果が郵送される日だ。
本音を言えば、弓近と共に結果を待ちたい所なのだが、そうもいかない。
家にいないと、自分の結果がすぐに受け取れないからな。
弓近の合格を確認した後、家に帰ったら自分は落ちていた、なんて事も万が一あるかもしれないのだから。
今頃弓近は何をしているのだろうか?
大方、結果が気になって勉強する気にもなれず、レトと二ーニャ相手に愚痴っているのかも。
そう考えたら、少しだけ笑えた。
「どうか、私も弓近も合格していますように……」
本来ならば、結果は大学まで見に行くのが常だろう。
受験地が遠い人間の為に、大学のHPで確認するという手段もある。
だが、そのどちらもしないと、二人で話し合って決めた。
大学まで見に行って落ちていたら、帰り道が気が重いし、HPの方は“情報提供サービスの一環の為、必ず合格通知書で確認してください。”と表示されるから、
結局は合格通知が届くのを待つのと同じだ、という結論に至って。
だから各自、自宅待機で郵便を待っているのだ。
そうして夕方に近い時分。
「はい、琴音。貴女に郵便よ」
母が、私宛の郵便物を部屋まで持ってきてくれた。
「おめでとう。今日はご馳走ね」
そう言いながら母が差し出したのは、A3サイズ程の大学の封筒。
表にあるのは、『重要書類在中』の文字。
曲がりなりにも、私は学校経営者の娘だ。
開けなくとも分かる。合格通知だ。
「……ありがとうございます、お母様」
素直にそう言って、急に私は弓近の事が気に掛かった。
私がコレを受け取ったという事は。
弓近の元にも同じように届いているハズだ。
合格か、不合格か。
合格ならいい。
でももし、不合格なら?
試験のチャンスは残り二回。
付きっ切りで受験勉強に付き合う必要がある。
そんな風に考えてそわそわしていると、母が言ってくれた。
「琴音、行ってらっしゃい」
「え?」
「気になるんでしょう?弓近君の事が」
「っ!……今から行ってきます!」
「お父さんには私から伝えておくわね。気を付けて」
「はいっ」
ニコニコと笑顔の母に見送られ、私は弓近の家へと急いだ。
お願いです。
どうか、弓近が合格していますように……!