夏休みが終わって二学期になると、生徒会業務は途端に忙しくなる。
何せ秋はイベント事の目白押しだ。
九月の終わり頃にある体育祭、その準備と練習に平行して、文化祭の準備も同時に進めなければならない。
生徒会にはそれプラス、文化祭の前夜祭・ハロウィン祭の準備もある。
夏合宿で大まかには決めていたとはいえ、実際に小道具を作ったりするとなるとやはり大変なのだ。
特に体育祭を終えて、各クラスが本格的に文化祭の準備を始めると、目の回るような忙しさだ。
「星は予算見積もりと現在の状況を比較してもう一度見積もりを出してくれ。満月と太陽はそれぞれ資材の発注と各クラスへの伝達。
弓近はハロウィン祭で手伝って下さる各先生方にこれを渡してきてくれ」
「琴音、これなんだ?」
「クイズの暗号と答えだ。それと、各中継ポイントでクリアしてもらう課題、その他諸々だ」
「あーそっか。各クラスからチーム分けのメンバー表が上がってきたのか……チーム数も凄いな」
「ついでに食堂に行って、参加賞のお菓子の内容についても相談してきてくれ」
「おう」
「琴音先輩は?」
「これから文化祭実行委員での会議だ」
「りょーかいです」
「じゃあ俺らも行こか」
そんな感じで、それぞれが自分の仕事をする。
俺はあちこち走り回って、目当ての先生を捕まえては、関連書類を渡してお願いしていく。
「えっと次は……お、ラッキー。盾波先生も早坂先生も数学教官室に行けば会えるな。……てか何だよこの“敷地の端、副会長の名に連なりしモノ”って暗号は。
これでちゃんと解ける奴いるのか……?」
それにしても。
いつもなら生徒会の仕事は琴音と一緒なのに、この時期だけだ。離れて行動するのは。
まぁ普段も琴音が一人で行動する事は勿論ある訳だし、大丈夫だとは思うが……。
やっぱり、一緒にいないと余計に寂しさが増す。
いつも隣にいるのに。
いる事ができるのに。
恋人同士ではないから、余計に思い知らされる。
離れてしまえば、もうそれだけで繋がりがないのだから。
幼馴染とは、所詮その程度の関係。
離れても、互いに互いの事を想っていられる存在とは、訳が違うから。
傍にいる事で、錯覚する。
もしかしたら、俺は琴音にとって“特別な存在”なんじゃないかと。
だけど。
やっぱりそうじゃないと自覚するのは、こうやって離れて行動している時。
目まぐるしい準備期間を終え、ハロウィン祭当日。
講堂から各チームが一斉にスタートしたのを見届けてから、生徒会メンバーはゴール地点にこっそりと移動する。
そうして参加者全員に配るかぼちゃのお菓子の詰め合わせの開始だ。
「しっかし……自分らで言い出した事とはいえ、めっちゃ大変ですやん、コレ……」
「ま、全員でやれば何とかなるだろう。暗号を解いて移動するだけでも大変だろうが、中継地点で出される課題もそれなりに時間が掛かるものだし」
「敷地の端まで、結構あるしな」
「そうですね。でも……私もちょっと参加したかったかも」
「まぁ、気持ちは分からなくもないけどな。答え知ってちゃつまらないと思うぞ?」
「そうですね」
「何にせよ、一番早いチームでも小一時間はかかるんじゃないか?それまでには終わるだろう」
「袋にお菓子入れて、テープで留めるだけだしな」
そう取り留めのない話をしながら、作業を進めていって。
ものの三十分もすれば、準備は終わってしまった。
「やっと終わった……」
「せやけど、まだ誰もきぃへんなぁ」
「まだ時間掛かるんじゃないのか?」
太陽と星がそう話していると、満月ちゃんが質問してきた。
「あ、そうだ。これって私達もお菓子貰っていいんですか?」
「そうだな。協力頂いた先生方にも渡す予定で余分に作ってもらったから、多分あると思うぞ」
「やったぁ!」
女の子って、やっぱり甘いものが好きなんだなぁとか思いつつ。
残りの待ち時間をどうしようか考えていた時、太陽が爆弾発言をした。
俺と琴音の関係を、決定的に変えてしまう発言を。