そうして数日して、琴音が出した結論は。
「やはり三人の中から会長と副会長を選出する事にした」
「そうか。で?誰を据えるんだ?」
「結論から言えば、一番会長向きなのは太陽だな。満月も星も、人前に出るタイプではないからな」
ま、それが妥当な所だろう。
暫くは生徒達に受け入れられないかもしれないが……太陽のあの明るさなら、すぐに人気の生徒会長になれるだろう。
「となると副会長は……」
「星だ。数字の得意な奴は簡単に見つかるからな」
「そうだな。満月ちゃんが来期も続行すれば、一年分の見本書類が溜まるし。それが目的だろう?」
「ああ。……本当は満月と星で会長・副会長をやってもらえれば、二人の距離も近付くんだろうがな」
そう言う琴音は少し残念そうだ。
そこで俺はふと思い付く。
「そういえばさ。何で琴音はそこまで満月ちゃんを応援するんだ?」
一度聞いてみたかったんだよな。
生徒会に入れたのは最終的には個人の能力で選んでるハズだから、その中で満月ちゃんが星を好きなのはある意味偶然なんだけどさ。
親しい人間の恋心は応援したくなるもんだけど……。
琴音が実際に色々動くのは珍しいからな。
「……満月は自分の想いを積極的に伝えるタイプではないからな。どちらかというと、一人でその想いを大切に抱え込むタイプだ。私とは違う意味で」
そう言いながら、琴音は苦笑する。
まぁ琴音の場合、俺への想いを抱え込んでいたのは伝えてもどうしようもないと思っていたからだけど。
もしかして、相手を見ている事しか出来なかった満月ちゃんに、どこかで自分を重ねてたのか?
それに更に保護欲みたいなのをかき立てられたってトコか。
「きっかけとかがない限り、ずっと相手を見つめてるだけで終わっちゃうタイプ、か」
「そうだ。星が太陽のような人懐っこいタイプならまだしも、あいつは自分に関係ない相手には無関心だからな」
「……それも問題だがな」
そう。
今まで約半年、時々校内でも見かける事はあったんだけど。
星が太陽や満月ちゃん以外の人間と話してるの、見た事ねーんだよ。
話し掛けられてるトコは見た事あるけどな?それも用件だけで終わり。
人間関係どうなってるんだ、お前?って聞きたくなる。
「星は一年の時はそれなりに騒がれてたみたいだが、あの通りの性格だから、案外モテないし」
「取っ付き難いもんな……根気よくないと付き合えない」
マジで何考えてるか分かんない時あるもんな、アイツ。
「だろう?ある意味、満月は根気あると思わないか?」
「確かに」
「さ、この話はこの辺りで終わりだ。三人に生徒会役員続行と役職の変更を伝えなくてはな」
「だな」
そうして俺達は、生徒会室に向かった。
生徒会室にはもう三人とも揃っていた。
「さて、時期生徒会役員について三人に話があるんだが」
「お、もうそんな時期ですか〜。で、メンバーはどないするんですか?」
「先輩達はもう、辞められるんですよね……」
「このメンバーもあと少し、ですか……」
太陽は殊更明るく振舞うが、満月ちゃんと星は少し寂しそうだ。
……てか、星もちゃんと寂しいとか思ってくれてるみたいだな。
最初の頃に比べれば、やっぱり多少の変化はあるみたいだし。
「……そんな顔をするな。私達がいなくなったら、お前達が全校生徒を引っ張っていく事になるんだぞ」
少し脅すようにそう言って、琴音は本題に入る。
「取り敢えずお前達三人には、引き続き役員を続投してもらいたいと思っている」
その言葉に、三人が頷いたのを確認してから、琴音は続ける。
「よし。それに伴って、一部役職の変更がある。太陽」
「はい」
「お前が時期生徒会会長だ」
「……ほんまでっか?俺に?」
驚きが過ぎるのか、太陽はポカンとしている。
そんな太陽をそのままに、他の二人にも通達する。
「副会長は星に頼む」
「分かりました」
「満月には引き続き書紀として、主に書類の纏め方を後輩に教えて欲しい」
「……はい」
「残り二人のメンバーは、これから決める。男女一人ずつ、できれば現一年生から選ぼうと思っているが、お前達の推薦はあるか?」
琴音がそこまで言った所で、太陽はようやく正気に戻ったのか、いきなり大声を上げた。
「ちょお待って下さい、琴音先輩っ!何でなんです?ホンマに俺が時期生徒会長でええんですか!?」
「何だ、不満か?」
「そんなんちゃいますって!アイツは?俺らの学年トップの久我!アイツが時期生徒会長なんやないんですか!?」
「落ち着け、太陽。琴音にもちゃんとした考えがあっての事だ」
というか、まさか太陽まで時期生徒会長が噂の人物だと思っていたとは。
「弓近先輩……」
取り敢えず太陽を宥め、理由を説明する。
勿論、あの笑顔が信用できないという部分は省いてだが。
「私の為、ですか……?」
「というより、彼を生徒会長に据えるのであれば、役員を全員男にしなければ嫌がらせ等の事態は避けられないだろう。それは生徒会として望ましくない。
男子校じゃあるまいし、生徒の意見を公正に取り入れる為にも女子役員は必要な存在だ」
「せやったんですか……そういう事も考えて、次の役員選ばなアカンのですね」
「そうだな。それで?引き受けてくれるか?」
「勿論!任せといて下さい!」
太陽のやる気のある返事に、琴音は満足そうに頷いた。
ま、この様子なら生徒会の方は俺達がいなくなっても大丈夫そうだな。うん。