大学の前期試験を終えて、二月中旬。
俺は落ち着かない気分で、レトとニーニャの相手をしていた。
本当なら次の試験に向けて勉強の一つでもしておきたい所なんだが、今日だけはそうはいかない。
何故なら。
試験の結果が、郵送されてくるハズだから。
「うぅ……なぁレト。俺、受かってるかな……」
「わん?」
「……そーだよな。聞いても分かんないよな。でもな、お前達にとっても大事な事なんだぞ?琴音が家族になるかどうかの。お前達だって琴音と一緒に
暮らしたいだろー?」
そう言って俺はレトとニーニャの頭を撫で回す。
「にゃうっ!」
流石に少し乱暴になってしまった為か、大型犬のレトはともかく、ニーニャは抗議を上げるかのように鳴いて、するりとその場から逃げていった。
「……わりぃ、ニーニャ」
一応小声でニーニャに謝っておいて。
ふと、琴音はどうしているだろうかと考えてみる。
「……琴音も落ち着かない気分になってるのかな……」
考えてみて、少なくとも俺よりは冷静だろうな、と思い直す。
「あーもうっ!結果、早く届けーっ!」
そんな感じで午前中を過ごして。
気になるなら大学まで見に行け、って感じだけどな。
それか大学のHPで確認するとか。
でも、その辺は琴音と話し合ったんだよ。
大学まで見に行って落ちてたら、帰り道が気が重いし、HPの方は“情報提供サービスの一環の為、必ず合格通知書で確認してください。”って表示されてるから、
結局は合格通知が届くのを待つのと同じだ、って事になって。
だから郵便待ってるんだよ。家で大人しく。
そうこうしている内に、玄関のチャイムが鳴った。
「は、はーい!」
来た。
ついに結果が……!
とか思ったのに。
「回覧板でーす」
「……はーい……」
……紛らわしいんだよっ!
こんな日に来るんじゃねぇ!
とか思ってしまうのは、やはり結果が気になって気が立ってる証拠なんだろうか?
そうして夕方に近い時分。
ようやく郵便配達人が来た。
「郵便物、お届けに参りました」
「はい……っ!」
これでダメなら、また試験の受け直し。
まだ崖っぷちではないとはいえ、不合格なら望みがないように思えてくるから不思議だ。
ドキドキしながら玄関を開け、郵便物を受け取る。
「……これ……もしかしてっ!」
俺が受け取ったのは、A3サイズぐらいの大学の封筒。
表には『重要書類在中』の文字があって。
慌てて中を見てみるとそれは思った通り、合格通知だった。
合格。
「……ぃやったーーー!」
思わずそう叫んで、ガッツポーズをする。
合格した。
大学に。
これで、第一通過点突破だ。
俺は大学に合格した事よりも、これで晴れて琴音の正式な婚約者(仮)になれた事の方が嬉しかった。