本格的に新メンバーで生徒会を始動する初日。
 改めて自己紹介が行われた。
 今までは、それぞれ前任者に付きっ切りで業務の引継ぎに専念してたから、あんまり個人での交流はなかったんだよな。


「さて、それじゃあ各自自己紹介を。まずは私から……といっても、生徒会メンバーの勧誘時に顔を合わせているがな。生徒会長月羽矢琴音だ。よろしく」
 口調はアレだが、ニッコリと笑った琴音はすげー美人なんだよなぁ……。

 っと、次は俺か。
「同じく、勧誘時に顔は合わせてるよな。生徒会副会長、弦矢弓近だ。分からない事があったら聞いてくれ」
 一応、生徒会は三期目だからな。それぞれの役職の仕事内容は把握してるつもりだ。

 そうして視線で、若竹に次を促す。
「え、えと、次は私ですね。書紀の若竹満月です。よ、よろしくお願いしますっ」
 少し緊張した様子の若竹は、そう言ってぺこりと頭を下げた。
 初々しい感じで可愛らしい。
 まぁ、緊張の原因は色々とあるだろうが。浅葱とか。

「ほんなら次は俺やな。同じく書紀の山吹太陽いいます。特に満月ちゃん、同じ役職やし、よろしゅうな」
 ニッと笑って山吹はそう言うが、いきなり馴れ馴れしく名前で呼ばれた事に、どうやら若竹はビックリしたらしい。
「え、あ、あの……よろしく」
 おどおどしたように、小さな声でそう言った。

 どうやら人見知りするタイプらしいな、この子。
 逆に山吹は初対面とかそういうの、全く気にしなさそうだ。
 正反対だな、この二人。

 俺がそんな風に思っていると、浅葱が自己紹介を始めた。
「会計、浅葱星。よろしく」

 ……っておい!それで終わりかよ!?
 マイペースというか、無口というか……。
 それにしても随分と個性的なメンバーが揃った気がする。
 大丈夫か、本当に。
 この不安が杞憂だといいんだが。


「それじゃあ自己紹介が終わった所で……」
 琴音がそう言った所で、山吹が口を開いた。
 何だ?
「一つ質問してもええですか?」
「質問?」

「会長はんと副会長はんて、二人付きおうとるんですか?」

 山吹の言葉に、俺は一瞬固まる。
 付きおうとる、って……付き合ってるのかって意味だよな?
 そりゃ、確かにいつも一緒にいるけど!
 ……そうなったらいいなぁ、とは思ってるけどっ!

 そんな風に俺が動揺してる間に、琴音が答える。
「……弓近は幼馴染だ」
 そう、幼馴染。
 ……改めてその言葉が琴音の口から出るのは、毎回堪えるんだが。
 すると若竹が驚いたように言う。
「幼馴染、なんですか?私、てっきり……」

 てっきり、って事は、恋人同士に見えてたって事か?
 俺と琴音が二人で並んでも、違和感がない?
 ……幼馴染以上の親密さがあるように、他人には見えるのか?

 だがその考えは、見事に琴音の一言に打ち消された。
「……そうか、全員高等部からの外部生だから知らないのか。私は中等部の時に『誰とも友人以上の関係にはならない』と公言しているんだ」
「誰とも、ですか?」
「そうだ」
「ほな、告白されても全部断ってまうんですか?」
「当たり前だ。そうでなければ自分の発言に対して無責任だろう」
 若竹と山吹のそれぞれの問いに、琴音はいつも通り答える。
「でも……」
 それでも何か言いたげな様子の若竹だったが、琴音がそれを遮るように口を開く。
「ついでだから、他に質問はあるか?」

 すると少しして浅葱が口を開いた。
「……名前は偶然ですか?」
「名前?何ゆうとんねん、星……って、確かに俺らの名前、天体ばっかやなぁ」
 浅葱の質問に納得したように言う山吹に、若竹もコクコクと頷いている。
「名前だけじゃないぞ?苗字も全員色の名前だ。まぁ、最終的には個々の能力で選んだから大丈夫だぞ」
 あっさりとそう言う琴音に、三人は驚きを通り越して半ば呆れているようだ。
 そりゃそうだよな。最初に目をつけた理由が名前って、誰だって呆れる。

「他に質問がないなら、そろそろ仕事を始めようか」
 その言葉を合図に、ようやく生徒会としての活動が始まった。


 何はともあれ、半年はこのメンバーだ。
 頑張るしかないだろうな。