部活後、智と礼義は思案顔で歩きながら、忠の事を話し合う。
「忠……大丈夫かな」
「うーん……ちょっとアレはキツかったかもなぁ……俺も色々言ったし……」
「礼君、忠の事心配してくれるの?」
「まぁね。色々邪魔されるのは腹立たしいけど、智ちゃんの事をすげー大事に想ってるのは分かるし。やっぱ嫌うよりは仲良くしたいじゃん」
「……うん、そうだね。そうなったら私も嬉しい」
「ま、暫くは様子見かな。今日の事で色々と考える所もあるだろうし。……色んな事がいい方向に変わるといいんだけど」
「一気に変わる事は難しいだろうけど、少しずつ変わっていったらいいよね」

 そうはいっても難しいだろう。
 本人が“変わりたい”と望まなければ、余程の事がない限り、周囲が変えるのは用意ではない。

 それを分かっているから、智も礼義もお互いに顔を見合わせて苦笑した。


 それから数日後。

「今度は本気で弓道やりにきました。入部させて下さい、お願いしますっ!」

 忠は弓道場に来るなりそう言って、頭を下げた。
「……その言葉に二言はないな?」
「はい」
 直樹は暫く忠を鋭く見つめていたかと思うと、踵を返した。

「入れ。入部を認めてやる。但し、もし今後この間のような事を言ったら、すぐに追い出すからな」
「はい」
「取り敢えず、最初は数日遅れた分、他の新入部員とは別行動だな」

 そうして忠は弓道部員となり、智と礼義はホッとしたが、これからの事を思うと、何とも複雑な気分だ。
 すると二人の所に朱夏と璃琉羽が近付いてきた。
「これから大変になるわね」
「朱夏。うん……でも、ちょっとホッとしてる」
「どうして?邪魔されるのは目に見えてるのに」
「そうなんだけどね。でも、さっき忠は自分から頭下げたでしょ?だから、ちょっとずつでも変化していってくれるかなって思って」
「……ま、確かに。あれで今後全く変化がなければ、部から追い出されるだけだしね」
 苦笑しながらそう言う朱夏に、礼義が言う。
「追い出されないといいんですけどね。それで、できればちょっとは仲良くできるといいなぁなんて……」
「でも、そんなにすぐは難しいだろうね。一度話した事あるけど、かなり頭固そうだったよ?」
 そう言ったのは璃琉羽だ。
 それは、新学期初日の事を言っているのだろう。

「ま、いざとなったら私達も味方にいるんだし、大丈夫でしょ」
「そうそう。いつでも協力するからね」
 朱夏と璃琉羽の頼もしい言葉に、礼義は頭を下げる。
「本当にありがとうございます」

 と、そこに直樹から声が掛かった。
「ほらそこ。お前らも真面目に部活に取り組めよー」
「はーい」
 四人は返事をすると、顔を見合わせて苦笑した。