「じゃあ俺、着替えてくるから。この後一緒にどっか行こ?」
 礼義が智にそう声を掛けると、朱夏がニヤニヤしながら言う。
「なぁに?礼君ってば、お兄さんから見事智を奪還できたからって、この後早速デート?」
 すると璃琉羽も悪乗りする。
「今まで邪魔ばっかりされてたし、ここ二週間は全く逢ってなかったんだもん。もう我慢の限界だよねー?」
「ちょっと、朱夏、璃琉羽。からかわないでよー」
 怒ったようにそう言う智は、照れているのだろう、顔が真っ赤だ。

 だが礼義は、そんな智を後ろから抱き締めて言う。
「お二人の言う通り、もう智ちゃん不足で参っちゃいそうです」
「れ、礼君っ!?」
「おぉ〜。礼君、言うねぇ」
「じゃあしっかり補給しないとね♪」
「〜〜っ!もう、三人とも知らないっ」
 三人の悪ふざけに智は、さらに顔を真っ赤にさせて、不貞腐れる。

 その事に三人は、顔を見合わせて笑いながら謝る。
「智ちゃん、ごめん。ちょっと悪ふざけが過ぎたかも」
「ごめんごめん。ほら、機嫌直して?」
「本当、ごめんね?でも、逢いたいのを我慢してたのは本当でしょ?」
「そうだけど……」
 そう言いながら智は三人をチラッと見て、少し考え込むようにしてから笑顔を見せる。
「……しょうがないなぁ。許してあげる」
 そうして今度は、全員で笑った。


「じゃあ、俺着替えてくるね」
 振り出しに戻って、礼義はそう言うと、更衣室に行く。
 そうして三人になった所で、朱夏が改めて言った。
「礼君、凄く頑張ったね」
「……そうだね」
「なかなかいないわよー?彼女の為にあそこまで頑張れる彼氏なんて」
「うん……凄く嬉しい」
「良かったね、智」
「……うんっ」
 そう返事した智は、満面の笑顔だった。


 着替えや片付けを終えて礼義が戻ってきた所で、四人は総合体育館を出る。
「じゃあ、お邪魔虫は退散するとしますか」
「二人のラブラブデート、邪魔しちゃ悪いもんね」
 入り口の所で、朱夏と璃琉羽はそう言った。

「そうだ礼君。明日からはまた、部活に顔出すんだよね?」
「はい、そのつもりです」
「良かった〜。やっぱり礼君がいないと、色々と大変なんだよねー」
「そうそう。早坂先生も、思わず礼君の事呼んだりしちゃってるしね」
「そうなんですか?」
 朱夏と璃琉羽の説明に、礼義は面白そうに聞く。
「あのね?礼君が来ないから、弓道部の皆も心配してくれてたの」
 智のその言葉に、礼義は嬉しくなる。
「じゃあ、皆に謝らないとダメかな」
「そうだね」
 ニコニコとしながらそう言う二人に、朱夏と璃琉羽が声を掛ける。
「じゃあ、また明日部活でね」
「じゃぁね〜」
 そう言って二人は手を振りながら去って行った。