六月になって、ある日礼義がいつものように弓道部に顔を出すと、何だか漂う空気がピリピリとしていた。
「と、智ちゃん?何かあったの……?」
「礼君。……あのね?ちょっと朱夏と璃琉羽が仲違いしちゃって……」
「マジ……?」
二人の間に流れる空気が険悪で、でも誰も声を掛けれなくて。
……喧嘩してるならどっちかは休むもんじゃないのか?と言いたくなる。
ちなみに、顧問の早坂先生はと見ると。
「……それどころじゃないみたいだな」
「え?」
「あ、いや。こっちの話」
この間先生が一年生の行事で不在だった時がある。
どうもその後から、日が経つにつれ次第に沈んでいってる気がする。
その行事で何かあったのだろうか?
だが、礼義の他は誰も気付いていないみたいだった。
「……止める人誰もいないんじゃんかよ……」
そう呟いて、だが礼義自身も見ている事しか出来なくて。
心配そうにしている智を安心させる事が出来ない自分が嫌だった。
それでも数日後には仲直りをしたみたいで、礼義は智が笑顔になった事が嬉しかった。(ちなみに七月に入る頃には早坂先生の悩みも解決したらしい)
なのに。
「朱夏サン元気ないね」
少ししてから、また朱夏の様子がおかしく、智が心配していた。
「う〜ん……こればっかりは朱夏にも原因があるしね」
どうやらちょっかいを掛けてくる男をクラス全員の前で問い詰めて、ちょっかいがなくなったはいいが、そこでやっと自分が相手を好きだったという事に気付いたらしい。
「……確かに。しかもそれ、相手も朱夏サンが好きだからってやつ?」
「多分……」
「この間の喧嘩もそうだけど……すれ違いって哀しいね」
「うん……」
礼義は、自分達はそうならないようにしようと、哀しそうな顔をした智を見て思った。
だが夏休みに入り、さっそくひびが入るとは思ってもみなかった。