待ち合わせ場所にいたのは智だけではなかった。
 昨日、彼女と一緒だった男二人もそこにいて。
 やっぱり別れ話か、と、胸が非道く痛んだ。

 このまま帰ってしまおうか?

 彼女の口から直接別れ話を聞くより、自然消滅を……と弱気な事を考える。

 だが。
 何か様子がおかしい。

 彼女は、何か男達と言い争っているように見えた。
 そのうち、片方の男が智の腕を掴む。
 智はそれを必死に振り解こうとしていて……。
「……!」
 その時、智と目が合った。
 助けて、と、言っているように見えた。

 その途端、礼義は何が何だか分からないまま走り出していた。
 そうして、智の腕を掴んでいた男の手首を横から掴んで言う。
「手を放せ。嫌がってるだろ」
「あ?テメェには関係ねーだろ。部外者は引っ込んでろ」
 すると男はそう言って礼義の手を振り解いた。
 つまり同時に智の腕も放したという事で。
 礼義はすかさず智を庇うように、男達との間に割って入った。
「関係あるね。俺は彼氏だから」
 その言葉に相手の男達は顔色を変えた。
「「ハァ!?」」
 その表情は怒りに満ちていて、まさに一触即発状態だった。
「もう止めてよ!」
 そう言って智が間に割り込んで来るまでは。

「智ちゃん!?」
「「智!?」」
 突然の事に、三人が三人とも慌てた声を出す。
 そうしてお互い、智の名前を呼んだ事に対してムッとする。
「……馴々しくしてんじゃねーよ」
「彼氏なんだから当然だろ」
「本当なのか、智」
 相手の問いに、礼義は思わず智を見る。
 もし否定されたら、と一瞬不安がよぎり、礼義は唾を飲み込んだ。

「本当だよ。礼君は私の彼氏」

 ハッキリと智の口から出た言葉に、礼義は深く安堵すると共に、飛び上がりたい程嬉しくなった。
 そうして余裕の笑みを相手に向ける。

 反対に向こうは信じていなかったらしく、肯定された事にかなりのショックを受けていた。

 今度は礼義が聞く番だ。
「智ちゃん、あいつら何者?」
 すると智はとても言いにくそうに口ごもってしまった。

 え。
 ちょっと待って、何その反応。
 まさか二股三股の相手だったりするワケ!?