荷物を置いて、まずはウチワ作り。
とはいっても、プラスチックの骨組みに和紙を貼るだけ、という小学生でも簡単に出来る代物。
但し、葉っぱ等を自分で集めて、骨組みと和紙の間に挟んでオリジナルのウチワにする、というのが課題だが。
ちなみに真面目にやらないと成績に影響するらしい。
……くだらない事やらせて。
というのは誰もが思っただろうが、やはり皆、真面目に取り組んでいた。
だが実際、いざやってみると押し花みたいで中々面白く、女子の面々はきゃあきゃあ騒ぎながらやっていた。
男子にはすこぶる評判が悪かったが。
中には無理矢理木の実を挟もうとする男子もいて、皆呆れていた。
挟めるワケないじゃん。
ウチワ作りを終えると、今度はカレー作りだ。
だが直前になって、先生達はとんでもない事を言い出した。
「かまどに火を点けるのは女子が、料理は男子が行ってください」
当然ブーイングが上がるが、何事も経験、という事と、役割分担交代の直前発表は毎年行われている、という事で決定されてしまった。
味の方がかなり心配なんですけど。カレーくらいまともに作れる、よね?
まぁカレーの方は女の先生が、火の方は男の先生が見回るらしい。
「ねぇ咲ちゃん、どうやるか知ってる?」
「えっと、まずは小枝と新聞紙。その上に太い枝を重ねて……うん」
咲の班は、桃花の他に二人。
やった事は無くても、手順を知識として知っている咲を筆頭に、テキパキと準備を終える。
「じゃあ火を点けるね」
最後に細長く丸めた新聞紙の先に火を点け、かまどの奥の方、小枝や新聞紙の固まっている辺りに入れる。
すると上手く火が回り、クラスでは一番に火を点ける事が出来た。
「お。生田の班は早いな。もう点いたのか」
「咲ちゃんのおかげですっ。ねー咲ちゃん」
丁度見回りに来た直樹にそう言って、桃花は咲を彼の前に押し出す。
「ち、ちょっと桃花っ!」
「生田、お前こういう事やった事あるのか?」
「あ、いえ……知識として知っていただけで、実際にやるのは初めてですっ」
先生と話をするだけで、凄くドキドキする。
「ふぅん、すげーな。……よし、じゃあ生田。他の班の奴の面倒任せた」
「え」
驚いたように感心し、何事か考えていた直樹は、そんな事を言い出した。
「俺、他のクラスの奴も見に行かなきゃなんねーんだよ」
「は?」
「だから任せた。じゃ」
「ええっ!?」
咲が声を上げると、直樹は意地悪そうに笑う。
「どうせやる事ねぇだろ?ほら、行った行った」
うっわ、横暴ー。
でも相手が先生だから、なんとなく許しちゃう自分もいるワケで。
ちょっと複雑。