次の質問を見て、咲は納得したように頷く。
「あ。やっぱり直樹さん、酢豚に入ってるパイナップル嫌いだったんだ」
「本当だ。嫌いな物『酢豚に入ってるパイナップル』って、凄くピンポイント」
「私は好きだけどなぁ。……小皿に取る時、なんか避けて取ってる?って思ってたんだよね」
「でも、嫌いな人は嫌いって言うよね」
「盾波先生は好き嫌いないんだ」
「うん。何でも食べてくれるから、凄く助かるの」
嬉しそうに言う幸花は、何だか凄く幸せそうで。
咲も桃花も少しだけ羨ましくなった。
そうして次の質問に、桃花は何とも言えない顔をする。
「……二人とも、特にこれといって趣味って無いんだね」
それに対し、咲も幸花も今更ながらに思い至ったように言う。
「そういえば、そうかな」
「うん。お休みの日は、お仕事してるか、家事手伝ってくれるか、一緒に出掛けるかって感じ」
「あ、でもそういうのっていいかも。じゃあ趣味は『彼女と一緒に過ごす事』が正解なんじゃない?」
ニコニコしながら桃花がそう言うと、咲も幸花も途端に真っ赤になる。
「そ、そうなのかな」
「そうだったら、ちょっと嬉しいね」
「うん」
照れながらも、はにかんでそう話す二人を、桃花は可愛いなぁと思いながら次の質問を見る。
「先生達の高校時代かぁ……何だか、全然想像つかない!」
「あ、でも私、前に写真見せてもらった事あるよ?」
嬉しそうにそう言う咲に、幸花は呟く。
「いいなぁ。龍矢さん、写真あるかなぁ……」
写真がある可能性は低いけれど、ダメ元で聞いてみようと幸花は思った。
その次の質問は『似ている親戚はいますか』という、普通だったらあまり聞かないような質問で。
「……新聞部の人、何でこんな質問したのかな」
「さぁ……?あ、でもこれって『人気男性教師二人に突撃取材』っていうのだから、似ている親戚がいるって事は、その人もカッコイイって事になるからじゃない?」
「あ、もしいるなら、見てみたいかも……」
咲のその呟きに、新聞部の狙いはこれかと、三人は納得する。
残念ながら、直樹も龍矢も『いない』という回答なのだが。
「でも親戚っていうなら……幸花ちゃんはそうだよね」
「うん。従妹だから……似てない?」
「顔はそんなには似てない、かなぁ?でも、のんびりとした雰囲気はちょっと似てるかも」
雰囲気が似ていると言われ、幸花は嬉しそうにはにかむ。
「えへへ。でも早坂先生の『かなり年上ばかりだから似てない』って、意味違うんじゃ……」
直樹の答えは、本当に似ていないのか、年齢的に似ていると認めるのが嫌なのか、どちらか分からなかった。
そうして最後の質問。
それは、咲と幸花が一番見てみたかったもので。
「あ、あったよ!『付き合ってる彼女の性格』っていう質問内容だけど」
「えっと、直樹さんは『真面目で純粋な子』……」
「龍矢さんは『優しくて思い遣りがあって、家庭的な子』かぁ」
その答えに、二人は何だか恥ずかしくてこそばゆくなる。
「『早坂先生も、盾波先生も、好きになった相手が好みのタイプだそうです』だって!良かったね」
「……うん」
「嬉しい」
不特定多数の人の目に触れるであろう学園新聞で、ここまで公言してもらえた事が、本当に嬉しくて。
咲も幸花も、幸せな気持ちで一杯になった。