学園新聞が発行されてから数日。
実家に帰ると、咲は恥ずかしそうな、でも少し嬉しそうな態度をしていて。
その事に直樹は、大分ご満悦だ。
だが。
「……何か嫌な予感するんだよなぁ……」
良い事なんて、そうそう長くは続かない。
「それに……何か引っ掛かるんだよなぁ、あの取材」
違和感、という訳ではないし、勿論取材自体におかしな所はなかったのだが。
“何か”が妙に気に掛かる。
その“何か”が分からないから、直樹はもやもやしているのだが。
「直樹さん、どうかしたんですか……?」
「あー、いや、何でもない」
咲と一緒にいる時にまで、その事が頭を過ぎるのが、余計に嫌な予感に拍車をかける。
そうして、直樹のその予感は的中した。
それはある昼休みの終わり頃。
「コピー室行ってくる」
「おー」
龍矢がコピー室に行ってしまい、直樹が数学教官室に一人になった時だった。
コンコン。
「どうぞー」
ノックの音に直樹がそう声を掛ける。
そうして入ってきたのは。
「せ・ん・せ♪」
「……神沼か。何の用だ?」
久し振りの神沼の登場に、直樹は苦虫を噛み潰したような顔をする。
もう諦めて、傍には寄ってこないと思っていたのに。
嫌な予感がする……。
「せんせぇってぇ……親類の中じゃ、一番年下なんですね」
「……それがどうかしたか?」
「じゃあ年下の女の子の知り合いってぇ、いないハズですよねぇ?」
その質問に、直樹はピクッと眉を動かす。
何だ、コイツ。
嫌な笑み浮かべやがって。
何を企んでる?
「……一応、彼女は年下だが?」
年下だという事を言うだけなら問題はないだろう。
直樹より年下でも、もう既に社会人になっている、という年齢はいるのだから。
だが。
「年下の彼女、ねぇ……。じゃあ、もしかしてコレがそうなんですかぁ?」
そう言って志保が見せたのは。
「!」
他でもない、直樹と咲が一緒に写っている写メで。
かろうじて咲の顔は判別できないが、直樹の顔はハッキリと映っている。
「一緒にいる子ってぇ、どう見ても高校生くらいですよねぇ?」
「……隠し撮りとはいい度胸だな。後でも付けてたのか?」
「やっだ、偶然ですよぉ。これって近所のスーパーでぇ。せんせぇの姿を見かけて、思わず撮っちゃったんですよぉ」
直樹にも覚えがある。
その写真が撮られたのは恐らく、直樹が母親に言われて咲と近所のスーパーに買い物に行った時のものに、間違いなかった。