突撃取材から数日後。
 新聞部の発行する学園新聞が、各学年と職員室前の廊下掲示板に張り出された。
 そうすると、毎回いつも人だかりが出来るのだが、今回はいつも以上だった。

「ね、ね。咲ちゃん、幸花ちゃん、学園新聞もう見た?」
 二人にそう聞いたのは桃花で。
「ううん。まだ」
「何か、今回はいつも以上に人がいるから」
「あのね、もう見たって言う子に聞いたんだけど、今回は早坂先生と盾波先生への取材記事がメインみたいだよ?」
「そうなの!?」
 それを聞いて驚いたのは咲だけで。
「あ、そういえば龍矢さん、そんなような事言ってたかも……」
 幸花は事前に聞いていたらしく、大して驚いてはいなかった。
「私、聞いてない……」
 少しだけそう落ち込む咲に、幸花が言う。
「恥ずかしかったんじゃないかな?」
「恥ずかしい?」
「うん。好きなタイプとかまで聞かれたって言ってたから」
「そうなんだ。確かに、直樹さんってそういうの、あんまり知られたくなさそうかも」
 咲はホッとしながらそう言って。
「ね、後で皆で見に行こうよ」
「うん」
「楽しみだね」
 桃花の提案に、咲も幸花も笑顔を溢した。


 三人が昼休みの終わり頃に見に行くと、丁度人の波は途切れていた。
「あ、丁度見れるよ」
「どれどれ?……あ、やっぱり早坂先生ってB型なんだぁ」
 納得したように幸花がそう言うと、咲は苦笑しながら言う。
「うん。やっぱり普段も、時々結構強引な所あるし……盾波先生はAB型なんだね」
「そうだよ。切り替えが早いっていうのかな、結構色々パッパッとやっちゃうの」
「ふーん。あ、早坂先生お姉さんいるんだ。会った事ある?」
 次の質問を見て、桃花が興味深々に聞く。
「うん、あるよ」
 すると、幸花もそれに乗ってきて。
「どんな人?」
「うーん……性格は結構似てる、かな。やっぱりちょっと強引な所があって……たまに直樹さんも逆らえないくらいだから」
 少しだけ笑いながらそう言うと、桃花も幸花も面白そうに言う。
「え〜?ちょっと見てみたいっ」
「うんうん。あ、でも龍矢さんも早坂先生をたまに黙らせちゃうから、そんな感じ?」
「それとはちょっと違うかなぁ……?」
 首を傾げながらそう言って、咲は次を見る。
「次は?座右の銘……直樹さんらしいなぁ。あ、盾波先生の座右の銘、良い言葉」
「うん。この言葉、お父さんの影響だって言ってたよ」
「いいお父さんなんだね」
 桃花がそう言うと、幸花は曖昧に笑った。

 龍矢の両親がもう亡くなっているのを、二人は知らないからだ。
 まぁ、それはわざわざ言う事ではないだろうと、幸花は何も言わないでおいた。