「じゃあ、後はマカロニだけですね」
母親に指摘された通り、マカロニが売り場のどこに置いてあるのか分からない直樹は、大人しく咲に付いて行くしかない。
そうして。
「マカロニってパスタだったのか……」
「何だと思ってたんですか?」
クスクス笑いながら言う咲に、直樹は何も言い返せない。
普段、全然気にも留めずに物を食べていたというのを、改めて気付かされた思いだ。
「最近、ペンネ・アラビアータとかあるじゃないですか。全部パスタの仲間ですよ?」
「あぁ……そう言われてみれば、形は似てるな」
売り場には他に、貝殻の形やらせん状を描いた物とかもあって。
自分が知らないだけで色々あるんだなと、直樹はしみじみと思った。
「マカロニはパスタよりもグラタンとかサラダに使われますから。馴染みのない人は分からなくて当然かも、ですね」
「そうだな」
そうして直樹は買い物カゴを確認する。
「買うモンはこれで全部だよな?」
「はい」
そうしてレジに行くと、ここでも直樹は驚いた。
「レジ袋って今、有料なのかっ?」
「はい。この辺りは一律一枚五円ですけど……」
買った物を持参した買い物袋に詰めながら、咲は答える。
「そうか……そういやそんな話も聞いた気がするが……もうなってたのか」
「有料化になってから、結構経ちますよ?」
「へぇ、知らなかった」
真顔でそう言う直樹に、咲は疑問に思う。
「……普段の買い物、どうしてるんですか?」
「いや、コンビニとか?」
「そういえば、この辺りのコンビニやドラッグストアのレジ袋は有料化してないですもんね」
「レジ袋の有料化は、各自治体の管轄のハズじゃなかったか?」
「あぁ、そうかもしれませんね」
そう納得した所で、咲は思い出したように直樹に注意する。
「それはそうと、ちゃんと自炊しなくちゃダメですよ?栄養が偏っちゃいます」
「別に平気だろ。最近は週に何度か実家で食べてるんだし」
本来の目的は勿論、食事などではなく咲に逢う為だが。
「それにしても……咲はいい奥さんになりそうだな」
直樹から突然言われた言葉に、咲は真っ赤になる。
「お、奥さんって……」
「だってそうだろ?買い物の仕方もしっかりしてるし、夕食作りも手伝ってるし。……何なら今すぐ、俺の所に来るか?」
そう言って直樹が顔を覗き込めば、咲は更に頬を染めて。
その様子に直樹はフッと笑うと、咲の頭をクシャッと一撫でした。
「んじゃー帰るか」
「……はい」
そうして二人はスーパーを後にした。