そうして部員は次の質問をする。
「じゃあ、次は家族構成を教えて下さい」
「両親と、既婚者の姉が一人」
「……パスしていいかな」
今度は龍矢がそう言い、直樹が納得したように頷く。
「あーまぁ、言い辛いわな」
「え?え?何かあるんですか?」
戸惑う部員に、龍矢は苦笑しながら言う。
「理由を説明しないと分からないだろうね。実は……両親はもう亡くなってるんだ」
「あ……」
「兄弟もいないからね。家族構成としては、独りになるかな」
その言葉に、部員は頭を下げる。
「す、すみませんでしたっ!」
「いいよ。知らなかったんだし」
「えっと、あの、じゃあ、家族構成ではなく、兄弟の有無って事で記事には載せておきますね」
「ありがとう」
質問はまだまだ続く。
「では、座右の銘は何ですか?」
「……『やりたい事を考えて行うのが自主性。好き放題やるのはただの我儘』だな」
「俺は『諦めなければ、いつか道は開ける』かな」
「先生達の特性が表れてるお言葉ですね〜」
他にも、好きな食べ物や嫌いな食べ物、趣味、特技から高校時代の思い出、果ては似ている親戚がいるかなども質問されて。
そうして、次の質問に二人は「やっぱり来たか」と思った。
「では、女性の好みを教えて下さい!」
当然あると思っていた質問。
思い浮かべるのは、やはり愛しの彼女の事で。
「……真面目で純粋な子」
「優しくて思い遣りがあって、家庭的な子」
「そうなんですか〜!それで、彼女とかはいるんですか!?」
やはり、一番質問したかったのはコレなのだろう。いくらか興奮したように聞いてくる部員に、直樹と龍矢は互いに視線だけを合わせて。
「俺も龍矢も彼女はいる」
「だけど、それ以上の質問にはパスさせてもらうよ」
すると、残念そうな声が上がった。
「えぇ〜!?皆そこが一番知りたいと思ってるんじゃないですか〜。ちょっとぐらい、ダメですか?」
「ダメだ」
「ま、敢えて言うなら、その彼女が今の理想だから」
「えっと……それって、『好きになった相手が好みのタイプ』って事ですか!?じゃあさっきの女性の好みがそのまま彼女の性格なんですね〜」
うきうきして言う部員を尻目に、直樹は龍矢を小声で責める。
「何言ってんだよ、お前」
「あれ、直樹は違ったのか?彼女の性格」
「そうじゃなくて。わざわざ情報与えてどうするんだよ」
「このくらい大丈夫だって。それにああ言わなきゃしつこく食い下がってくるだろうし。それに学園新聞は生徒全員が見るんだぞ?」
それはつまり、二人の彼女である咲や幸花も見るという事で。
それはそれで、反応を見るのが楽しみだ。
「……ま、それならいいけど」
直樹が大人しく引き下がった所で、写真を撮ると言われて。
二人して写真を撮ってもらい、ようやく突撃取材が終了した。