≪Side:NAOKI≫


 気付くと、自然に咲を目で追っている自分がいる。

 ―― 一体何をやっているんだ、俺は。

 相手は生徒だぞ?
 一生徒のみを気に掛けるなんて、教師失格だ。

 だが。
 彼女を泣かせたのは間違いなく俺。
 ……あの時、俺が何の気はなしに呟いたあの一言。
 彼女に向けて言ったものではないのに。
 結果的には彼女に向けて言ったも同然だ。

 ちゃんと謝って、誤解を解いて。
 伝えたいんだ、自分の気持ちを。
 俺は――。


 咲の瞳が俺を映していないと悲しい。
 咲が俺を意図的に見ないようにしているのを見ると苦しい。
 切なさが胸に込み上げてきて。
 こんな感覚、初めてだ。
 どうすればいい?


 俺はもうどうする事も思い浮かばなくて。
 確実に咲と話が出来る――実家に帰る事にした。