月曜日。一週間の始まりの日。
 そして。
 咲にとっては気が重い週明け。
「……雑用……はぁ……」
 授業時間枠以外の、しかも折角の休日に任命されてしまった雑用係。
 それを考えるだけで気が重く、思わず溜息が出てしまう。
 すると突然、背後から声を掛けられた。
「生田、オハヨウ」
「!……オハヨウゴザイマス」
 いつも通りの仏頂面。
 だけど、咲だけに分かるように口の端を少し上げて。
 咲だけに聞こえるように小声で挨拶をして。
 直樹は何食わぬ顔で咲の横を通り過ぎて行った。
 それが“雑用ヨロシク”と言っているように聞こえて。
「……はぁ……」
 気が重かった。


 朝のSHRで、その話は早速出た。
「あー、今日の放課後、手伝って欲しい雑務があるんだが。誰かいないか?」
 だが当然誰も立候補はしない。
 勿論、咲も。

 だって立候補なんてしたら、それこそ変だし。
 もしかしたらやらなくて済むかも……。

 しかしその考えは甘かった。
「……じゃあそうだな……面倒臭いから、出席番号一番。放課後残れ」
「……」
 ちなみに出席番号一番は咲だ。
「生田は確か部活やってなかったよな?よし決定。以上」
「……はい」

 ……逆らう隙すらくれないし。
 クラスメイト達はこそこそと、「お気の毒ー」とか哀れんでるだけだし。
 ……そりゃ関わりたくないわよね。
 そもそも何でウチの学校は出席番号が男女混合なのよ!?
 しかもこのクラス、“あ”から始まる人いないし!
 最悪。


 放課後になって職員室に行くが、直樹はいなくて。
 他の先生に聞くと、教官室じゃないかと教えられた。


 月羽矢学園では、各担当教科ごとに準備室が割り当てられている。
 つまり、各教師達は職員室と準備室、二つの机を持っている訳で。
 生徒にしてみれば不便だが、テスト期間中は準備室への立ち入りは禁止になるというのだから、テスト作成用の部屋みたいなものなのだろう。
 その別名が教官室。ちなみに直樹は数学担当だ。