「そこのお二人。ちょっとよろしいですか?」
 デート中に突然、占い師と思われる人物に声を掛けられ、二人は足を止める。
 その人物が言うには。
「お二人は別れた方が、お互いの為になると出ていますよ」
 との事だった。


≪占い≫


【璃琉羽&緋久の場合】


「……それ、は」
「緋久君、早く行こうよ」
「え、璃琉羽!?」
 占い師の言葉に、明らかに動揺を見せた緋久に、璃琉羽は彼を引っ張ってその場から離れる。

「璃琉羽、急にどうしたんだ?」
 戸惑いながら言う緋久に、璃琉羽はようやく足を止めて彼に向き直る。
「だって緋久君、さっきの言葉、すっごく気にしてた」
「……だって、実際にその通りだと、思ったから……」

 自分が不良だという噂。
 それは勿論、多大なる誤解なのだが。
 それでもその噂のせいで、少なからず璃琉羽にも迷惑が掛かっている、と緋久は思う。

 だが。
「緋久君、間違ってるよ」
「え?」
「噂のせいで迷惑が掛かってるから、って思ったでしょ」
「……」
「でも、緋久君は実際には何も悪い事はしていないんでしょ?だったらそれでいいよ」
「でも……」
「占いって、結果が常に変化するんだよ?今は確かに別れた方がいいって出てるかもしれない。でも、噂が誤解だって皆がちゃんと分かってくれたら? 別れなくてもいい、って出るかもしれないんだよ?」
「……」
「“今”の状況だけで判断する事ないよ。“未来”は違う結果を指し示してる可能性だって十分にあるんだよ」
「未来……」
「あ……じゃあ続き聞けばよかったのかな?でもきっと、結果はこうだよ」
 含ませるようにそこで一旦切ると、璃琉羽はニッコリと笑って言う。

「今は別れた方がお互いの為になると出ています。ですが、辛抱してそれを乗り切れば、かけがえのないパートナーになれるでしょう!」

 璃琉羽のその言葉に、緋久の表情は明るくなる。
「そう、だな。周りの言葉に振り回されてちゃ、ダメだよな」
「そうそう。だから、さっきの嫌な言葉はもう忘れよ?」
 そう言いながら、璃琉羽は緋久の腕に抱き付くようにくっ付く。
「ああ」
 その事に、緋久は少し照れたような表情をして、二人で歩き出した。