「そこのお二人。ちょっとよろしいですか?」
 デート中に突然、占い師と思われる人物に声を掛けられ、二人は足を止める。
 その人物が言うには。
「お二人は別れた方が、お互いの為になると出ていますよ」
 との事だった。


≪占い≫


【智&礼義の場合】


それを聞いてすぐに、礼義は斜め下に顔を背ける。
「あー……あの二人の事か……」
 礼義が真っ先に思い浮かべたのが、仁と忠の二人で。
 礼義の言葉に、智も思い至ったのだろう。
「……ごめんね?礼君」
「いやっ!智ちゃんのせいじゃないしっ!」
 謝った智に対し、礼義は力一杯否定する。
「でも……」
「大丈夫!あの二人が何言っても、俺は智ちゃんと絶対別れたりしないから!」
「礼君……でも」
 だが、礼義が智の言葉を遮る。

「俺は、智ちゃんと逢えなくなる方が嫌だ」

 真剣な目でそう言われて、智は少し恥ずかしそうに顔を伏せる。
「……うん。私も、礼君と一緒にいたい……」
「智ちゃん……っ!」
 智の言葉に、礼義はパァっと嬉しそうな表情になる。
 きっと、犬だったら今頃盛大に尻尾を振っているだろう、というくらいの。
「じゃあ、行こうか、智ちゃん」
「うん」
 そうして二人はその場を歩き出した。

 ……声を掛けてきた占い師の存在を、すっかり忘れ去ったまま。