「そこのお二人。ちょっとよろしいですか?」
 デート中に突然、占い師と思われる人物に声を掛けられ、二人は足を止める。
 その人物が言うには。
「お二人は別れた方が、お互いの為になると出ていますよ」
 との事だった。


≪占い≫


【遊菜&貴寿の場合】


「あの……どういう事、ですか……?」
「言い換えるならば、今のままでは、お互いにマイナスの影響しか与えない、という事です」
 不安そうに聞く遊菜に対し、返ってきたのはそんな言葉で。
「マイナスの影響……」
 青ざめた様子でそう呟く遊菜に、貴寿が代わって口を開く。
「どうすればいいんですか?」
「簡単ですよ。運気を変えればいいのですから」
「運気を、変える……?」
「ええ」
 その言葉に、二人は顔を見合わせる。
「運気を変えるなんて、そんなに簡単にできるものなんですか?」
「はい。風水などの開運術は有名でしょう?西の方角に黄色の物を置くと金運UPとか」
「あぁ、成程。玄関に鏡を置くといいとか、そういう事ですね」
「ピンク色は恋愛運UPとか、緑色は健康運UPとか……」
 少し考えてみれば、案外身近に風水が浸透している事に気付いて、二人は心なしか安堵する。

 すると、徐に二人の目の前にお揃いの根付が差し出された。
 陶磁製の豆猫根付と、人工石のピンクのキャッツアイがぶら下がった、ストラップタイプの物だ。

「あの……これは?」
「開運の根付ストラップです。今なら1つ750円を2つで1200円でお譲りしています」
「…………」
 ニッコリと笑顔でそう言われ、不安になっていた二人は思わず買ってしまった。


「う〜ん……」
「どうかしたんですか?先輩」
「いや……何だか都合良過ぎな気がして」
「……確かに、ちょっと変ですよね。タイミング良すぎというか……」
「まぁでも、考えてみれば遊菜とお揃いの物って持ってなかったから、丁度良かったかもな」
「そうですね」
 そうして二人は、お互いの携帯に付けられた根付を見て、少し照れたように、でも嬉しそうに笑った。