二日目side:SAKU
今日の三者面談はある意味ドキドキする。
私の前は一人分空いてるから、その間に説明したい事があるって言われたんだけど……。
言われた通り、面談予定時間より少し早く咲が教室に入ると、直樹の他にもう一人、別の教師がいた。
何度か見かけた事がある。
日直日誌なんかを届けに数学教官室に行くと、たまに直樹さんと話をしている人。
「えっと、生田。コイツは盾波龍矢。俺と同じ数学教師で、二年生担当」
「初めまして。えっと……生田咲、さん?」
「あ、初めまして」
何だか優しそうな雰囲気の先生だ。
「でだ。俺の代役」
「……代役、ですか?」
どうするのかとは思ってたけど、まさか代役を立てるとは思わなかった。
せいぜい、変装でもするのかな?ぐらいにしか思ってなかったのに。
「という訳だからよろしく、生田さん」
「よろしくお願いします」
そうして龍矢は直樹に向き直る。
「で?お前はどうするんだ?」
「あ?あぁ、そこの教壇の下にでも隠れる」
それを聞いて、龍矢は僅かにクッと笑い声を上げ、咲も必死に笑いを堪えた。
「笑うな。いいか?あくまでもお前は生田の担任だからな?変な事言ったら後でシメるぞ?」
「チッ。お前の母親に色々吹き込むチャンスなのになぁ」
「テッメ!」
からかうような口調の龍矢に、直樹は今にも突っ掛かって行きそうで、一触即発の雰囲気に咲は慌てる。
「あ、あの!そろそろ時間なんで、私、おば様を迎えに行ってきますね」
そう言って咲は、二人を止めてから教室を出る。
「仲いいのか悪いのか分かんないよ、あの二人……」
どうか無事終えられますように。
そうして咲は面談の間中、ずっと緊張しっぱなしだった。
ようやく緊張の糸が解れたのは、結局何事もなく面談が終了してからだった。