三者面談は、夏休み直前の七月中旬の三日間で行われる。


初日side:RYUYA

 初日は殆ど時間のズレもなく、特に問題なく終わろうとしていた。

「次は絹川で最後か……」
 ガラッと引き戸が開いて、朱夏と保護者が入ってくる。
 と、その保護者を見て龍矢は驚いた。
「絹川さん……っ!?どうもお久し振りです」
「盾波さんですか?いやぁ、その説はどうも」
 朱夏の保護者として現れたのは、以前幸花を引き合わせてくれた、弁護士の絹川春秋氏だった。
「ちょ、兄貴、先生と知り合いなの?何で!?」
 事情を全く知らない朱夏は一人驚く。
「お兄さんだったんですか。そういえば同じ苗字ですね。気付かなかった」
「こちらもですよ。以前お会いした時に月羽矢で教師をされているのは知っていましたが……ちなみにその後、どうです?」
「えぇ、大丈夫です。特に当初懸念していた事も起こっていませんし、元気にやってますよ」
 二人して幸花の事を話していると、今まで黙っていた朱夏が口を挟む。
「ちょっとー!私の面談は?二人だけで話するなっ!」
「「あ」」
 思わぬ所で会ったので、当初の目的を忘れていた。
「……じゃあ始めましょうか。本日はご両親のご都合が?」
「ええ。小さな法律事務所をやっているんですが、今抱えているモノが難航しているようで……」
「そうですか……で、朱夏さんなんですが……」
 そう言って朱夏の面談を始める。


「……では以上です。お疲れ様でした」
「あー終わったぁ!じゃ兄貴、私部活あるからっ!」
 面談が終わるや否や、朱夏は教室を飛び出して行ってしまった。
「こら、朱夏!……すみません。どうにも落ち着きがなくて」
「いえ。……あ、そうだ。幸花なんですが、今、ココの一年に在籍してるんです」
「そうなんですか。少し気掛かりだったんですよ。……彼女も急に環境が変わってしまったから……ですが、私の方も何かと忙しくてなかなか連絡が出来なくて。今日は本当に、お会い出来て良かったです」
「えぇ、また今度、機会がありましたら、いつでもご連絡下さい」
 そうして春秋を送り出して。

 教室に一人残った龍矢は、家に帰ったら早速今日の事を幸花に話してやろうと思い、手早く書類を纏め始めた。