夏休みや冬休み等の長期の休みは、学生にとっては嬉しい限り。
 だけどそうとも言っていられなくて……。


【智の場合】


「ねぇ礼君?礼君の高校って、宿題大変?」
「宿題?うーん、どうだろ……他の学校と比べた事がないからなぁ。智ちゃんの所は?」
「それなりに、って所かな。主要五教科からしか宿題出てないんだけどね」
「俺の所もそんな感じだよ。小学校の時にあった習字とか絵とかがないだけマシかもしれないけど」
「あ〜あったよね。後は自由研究とか読書感想文とか」
「絵日記もあったなぁ……日記なんて毎日書けなくて、最終日に、この日は何があったっけ?って大騒ぎ」
「うん、うん。私は小学校の時、朝顔の観察日記があったけど、気を抜くと何日か間が空いちゃって。お水はお母さんがあげてくれてたから、枯れなくてすんだけど」
「あー俺もあったよ。小学校の授業で植木鉢に朝顔の種蒔いて。終業式にそれ各自で持って帰って、観察日記が宿題。……俺は途中で枯らしちゃったけど」
「……高校ではそういう宿題ないもんね」
 少しだけ寂しそうに言う智に、礼義はわざと大きな声で言う。
「あ〜あ!智ちゃんと同じ宿題内容なら、中身写させてもらえるのになー」
 その言葉に智は一瞬キョトンとし、すぐに意味に気付いて苦笑する。
「ダメだよー。あくまで自分の力でやらなくちゃ」
「そうだね」
 笑顔になった智に、礼義は少しホッとする。

 過去を思い出すという事は。
 その分、家族の事を思い出すという事だから。
 親元を離れて寮生活をしている彼女にとっては、やはり寂しいのかもしれない。
 その寂しさを、ほんの少しでも紛らわしてあげれればと思うから。

「智ちゃんは、宿題進んでる?」
「まぁまぁ、かな。気が向いた時に一気に進めてるの」
「へー。確かに気が進まない時にやっても、時間だけが過ぎてっちゃうしね」
「うん。集中すれば、それだけ頭にも入るしね」
「……俺はそもそも、勉強に対して気が向くという事が少ないからなぁ……」
「じゃあ、礼君は宿題どうしてるの?」
「智ちゃんと気兼ねなく逢えるように、智ちゃんと逢えない日でバイトも入ってない時に、進められるだけ進めてる」
 キッパリとそう言う礼義に、智は顔を真っ赤にさせる。
「礼君……ありがと」
「俺の場合、智ちゃんの為って思ったら俄然やる気が出るんだよね」
 ニコニコとそう告げる礼義に、智は嬉しさと恥ずかしさで、暫く顔が上げられなかった。


 気が向かない時にいくらやっても身に付かないから。
 気が向いた時に一気にやるのも、一つの手。