後からそれぞれカップルに別れて観覧車に乗り込んだ四人は、先に乗った愁と朱夏の心配をしていた。


 観覧車の中で、璃琉羽は心配そうに上の方を見上げる。
「朱夏ちゃん、大丈夫かなぁ……」
「大丈夫だよ。……白山のヤツが余程の馬鹿じゃなければね」
 そう言って緋久は、隣り合わせに座った璃琉羽の手を、優しく包み込むように握る。
「璃琉羽。今ここで俺達が二人の心配しても、なるようにしかならないよ」
「でも……」
「そりゃ、俺だって心配だよ?密室に二人っきりなんだから、関係が悪化しても下に着くまで誰も止める人はいない」
「そんな……!」
 抗議するように声を上げた璃琉羽を制して、緋久は続ける。
「でも、もしそうなってたら、その時は俺達が仲を取り持ってやればいい。……俺達が、そうだったように」
「緋久君……」
 緋久が言っているのは、朱夏に仲を取り持ってもらって、自分達が付き合い始めるようになった時の事だ。
「な?だから今は、俺といる事に集中して。折角二人きりなんだから」
「……うん」
 璃琉羽はまだ少し心配そうにしていたが、自分達も今二人きりなのだという事実に、恥ずかしそうに頬を染め、真っ直ぐに緋久を見て微笑んだ。
 そんな璃琉羽に、緋久も微笑んで言う。
「俺達もジンクス試そうか?」
「……うんっ」
 そうして二人は寄り添った。


 一方智と礼義はというと、向かい合って座り、同じく朱夏の心配をしていた。
「朱夏……平気かなぁ」
「一応、俺と宗方さんとで釘さしておいたけど……」
「心配、だなぁ……ほら、朱夏って少し意地っ張りなトコあるでしょ?白山君もそうだし、似た者同士だからケンカしてなきゃいいけど……」
「ま、確かに意地っ張り同士が意固地になってこじれちゃったら大変だけど……白山さんも、第三者である俺達の意見聞いて考えを改めたみたいだし、後は二人次第だと思うよ」
 だが、それでも心配そうにしている智を、礼義は自分の隣に招き寄せる。
 そうして隣にきた智の腰に手を回し、もう一方の手で頬に触れる。
「多分、なんだけど。朱夏さん、第三者の存在に頼りたかったんじゃないかな」
「……どういう意味?」
「朱夏さんが自分からジンクスの事を言い出すと思う?」
「あ……」
「白山さんは知らないだろうって思ってて。実際そうだったし。まさかケンカになるとは思ってなかったみたいだけど」
 すると智は、なんともいえない複雑そうな表情をする。
「……智ちゃん?どうかした?」
「……だって礼君、何か朱夏ちゃんの事、凄い分かってるっていうか……」
「んー……ヤキモチ妬いた?」
「っだって!礼君にはやっぱり、私を見てて欲しい……」
 最後の方は本当に消え入りそうな声で、俯く智を礼義は愛しそうに見つめる。
「俺が見ていたいのは智ちゃんだけだよ。朱夏さんは俺達にとって、恋のキューピッドみたいなものだから。上手く行って欲しいって思うのは智ちゃんも同じでしょ?」
「……うん」
「俺は智ちゃんとだから、ジンクスも信じるんだよ?」
 そう言って礼義は、自分の額を智の額とくっ付けた。