「まぁまぁ。朱夏さん、落ち着いて」
「多数決で決めるっていうのはどう?」
「元々、反対されたら別々にデートって決めてたんだし」
「折角のデートなんだから。な?」
 四人に宥められて、二人は一応言い争いを収める。
「……じゃあ多数決ね。賛成の人!」
 そうして手を上げたのは、愁以外の五人。
「じゃあ決行ね。トリプルデート決定ー!」
「うっわ……何かスゲー理不尽……」
「ほらほら、文句言わないの」
 不満そうな愁に対し、朱夏はご機嫌な様子だ。

「えと、じゃあ一応自己紹介した方がいいですよね?」
 そう切り出したのは礼義だ。
「都立高二年、伏見礼義です。智ちゃんの彼氏なんで、よろしくお願いします」
「……白山愁。朱夏の彼氏」
「俺は宗方緋久。璃琉羽の彼氏です。よろしく」
「宗方って……月羽矢最強コンビの片割れ!?」
 驚いたようにそう言う礼義に、璃琉羽は慌てて言う。
「礼君!あのね、緋久君は悪い人じゃないの。本当は凄く優しくて……」
「……悪い人?」
 だが、きょとんとする礼義に、緋久は苦笑する。
「璃琉羽、違う。多分、彼が言ったのはバスケ部の方。そうだろ?」
「あ、はい。バスケ部のダチから聞いた事あって」
「なんだ、そっか」
 璃琉羽がホッとすると、朱夏が愁と緋久に向かって言う。
「ちなみに礼君が噂の、“弓道部に通いつめてる他校生”だから。そこんとこ覚えときなさいよ?」
「へぇ」
「そうだったのか」
 愁は興味なさそうに、緋久は安心したように言う。
「え、噂って何?俺の事、月羽矢で噂になってるの?」
「うん、何か、そうみたい……」
「何か変な感じかも。自分の知らない所で噂になってるって」
 礼義と智がそう話していると、朱夏が全員に向かって声を掛ける。
「じゃあ行こっか!」
 まだ何かを企んでいそうな朱夏の笑みに、一同は内心溜息を吐いた。