そうして何だかんだでいい雰囲気になった二組とは違い、愁の機嫌は段々悪くなっていった。
「愁、どうかした?」
殆どのアトラクションを制覇した――但しメリーゴーラウンドは満場一致で却下――朱夏が不思議そうに聞くが。
「……別に」
愁は朱夏から視線を逸らして、それだけしか言わなかった。
「もー……じゃあ最後の締めに、観覧車乗ろっか」
日も暮れてきた所で朱夏がそう提案する。
だが。
「……俺はいいよ」
そう言ったのは愁だ。
「俺はパス」
「何で?あ……もしかして高いトコ、ダメなの?」
「別に。ただ、乗りたくないだけ」
愁は苛々していた。
折角のデートなのに、グループ行動している事に。
それなのに朱夏は、他の二組とも楽しそうに話をしていて。
観覧車は個室に約15分。
今の自分では確実にその場の雰囲気を壊しかねない。
だから遠慮しているのに。
「いいじゃない。乗ろうよ」
気楽にそう言う朱夏に、もっと苛々した。
だからかもしれない。
愁が、朱夏の隠された意図に気付かなかったのは。
「嫌だね」
「……バカッ!」
「!?」
愁はいきなりバカと言われて驚いた。
言われた内容に対してではない。
そう言った朱夏の表情が、今にも泣き出しそうに歪んでいたから。
「朱……」
「ちょーっといいですか、白山さんっ!」
「そうそう。ちょっと男同士で話しような」
「え、あ、おい!?ちょっと待てお前ら!」
朱夏に声を掛けようとした所で、礼義と緋久が愁の両側から腕を掴んで、少し離れた場所まで連行した。